読書感想文

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伊藤昌哉『自民党戦国史』

実録自民党戦国史―権力の研究作者:伊藤 昌哉朝日ソノラマAmazon 政治の土俵でジジイが寝技をかけあってばかりというのは困ったことではあるけど、健全さの表れでもあると思う。つまり「他人が何を考えているかなんて、わからない」という前提に立っていると…

ピエール手塚『ゴクシンカ1・2』外山恒一『政治活動入門』

ゴクシンカ 1 (ビームコミックス)作者:ピエール 手塚KADOKAWAAmazon ゴクシンカ 2 (ビームコミックス)作者:ピエール 手塚KADOKAWAAmazon 政治活動入門作者:外山恒一百万年書房Amazon 顔と心に傷を負ってひきこもり同然の暮らしを送っていた男・手塚冷士が…

小島直記『日本策士伝』

日本策士伝―資本主義をつくった男たち作者:小島 直記中央公論社Amazon 明治・大正期の異常人物がたくさん出てきて楽しいが、やはりその中でも異常人物のチャンピオンは杉山茂丸である。 「君には今お会いしたばかりであるが、実は必要にせまられていることが…

福沢諭吉『福翁自伝』

福翁自伝 (講談社学術文庫)作者:福沢 諭吉,土橋 俊一講談社Amazon 裸体の事について奇談がある。 ある夏の夕方、私ども五、六名の中に飲む酒が出来た。すると一人の思いつきに、この酒をあの高い物干の上で飲みたいというに、全会一致で、サア屋根づたいに持…

『論語』と『論語と算盤』を見比べてみる

論語と算盤 (角川ソフィア文庫)作者:渋沢 栄一KADOKAWAAmazon 論語 増補版 (講談社学術文庫)作者:加地 伸行講談社Amazon 渋沢栄一『論語と算盤』の核は、孔子は金儲けを嫌ってなんかいないんだヨ、道徳と金儲けを両立させることは可能なんだヨ、というところ…

ヴィトルト・リプチンスキ/春日井晶子『ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語』

ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語 (ハヤカワ文庫NF)作者:ヴィトルト リプチンスキ,Witold Rybczynski早川書房Amazon 紳士にとって旋盤を回すことは、婦人にとっての刺繍のようなもので、一八世紀の終わりまで趣味として人気を保っていた。一…

奈良本辰也・杉浦明平・橋川文三『批評日本史<6> 吉田松陰――政治的人間の系譜』

批評日本史〈6〉吉田松陰―政治的人間の系譜 (1971年)思索社Amazon ヨッシーは色んな思想を好き嫌いせずパクパク食べ、弟子をポコポコと産みました。ヨッシーは悪を倒すための冒険を続けたけれど、目の前に広がった空隙を飛び越えられず、奈落の底に落ちて死…

藤代泰三『キリスト教史』

キリスト教史 (講談社学術文庫)作者:藤代泰三講談社Amazon 大変勉強になった。著者の歴史的な見解を踏まえることで、教理の理解が深まることが多々あった。例えば三位一体説がどうしてそんなに問題になるのか、よくわかってなかったのだけど キリストにおけ…

渡辺京二『夢と一生』

夢と一生 (河合ブックレット 42)作者:渡辺 京二河合出版Amazon この再春荘で出会った「忘れがたい人」には、ほかに岩波文庫のヘーゲル『小論理学』二巻を読み抜き、氏にとっては理解不可能なところに自己流の傍線を引いて自らの生きた証とした青年と、ろっ骨…

新渡戸稲造『世渡りの道』

世渡りの道 (文春学藝ライブラリー)作者:新渡戸 稲造文藝春秋Amazon 新渡戸の説く「世渡りの心得」をそのまま受け取っても悪くない(一部現代的にはキャンセルされかねない部分はある)が、明治期のインテリから見た「日本」の自意識、世界というものが垣間…

村上重良『日本宗教事典』

日本宗教事典 (講談社学術文庫)作者:村上 重良講談社Amazon 三種の神器、八尺瓊勾玉の項より。 箱の中は、天皇といえども見ることを禁じられ、箱に積った埃すら払ってはならないとされていた。 (中略)十世紀なかばの冷泉天皇は、箱の中を見ようとして紐を…

懐奘『正法眼蔵随聞記』

正法眼蔵随聞記 (ちくま学芸文庫)筑摩書房Amazon 欲望を爆発させた後に来る、いわゆる賢者タイムって「これが全ての欲得から開放された悟りなのでは?」と思う人は多くいると思うんだけど、「悟った後も修行を繰り返せ」「一事に集中せよ」「専心打坐あるの…

フロイト『精神分析学入門』

精神分析学入門 (中公文庫 フ 4-1)作者:フロイト中央公論新社Amazon フロイトの理論の是非は置いておくとして、まず、フロイトはとにかく話がうまいおっさんなのであって、この本はそれだけでおもしろく読める。 さて、はじめにみなさんをノイローゼ患者なみ…

プルタルコス『饒舌について』

饒舌について―他五篇 (岩波文庫 青 664-1)作者:プルタルコス岩波書店Amazon プルタルコスのエッセイは異常におもしろい上、古代の知識人らしく、話の登場人物もセレブばかりでとにかくすごい。現代の「芸能人が片手間で書いたユーモアエッセイ」みたいのを一…

石井公成『東アジア仏教史』

東アジア仏教史 (岩波新書)作者:公成, 石井岩波書店Amazon 釈尊の物語風な伝記が、 中央アジアのマニ教徒によって古ペルシャ語に訳され、六世紀頃に中世ペルシャ語に改められた。「ポーディサットヴァ(菩薩)」という言葉の語形はブーダーサフと表記され、…

巌本善治『海舟座談』

新訂 海舟座談 (岩波文庫)岩波書店Amazon 勝海舟は幼い頃、野犬に陰嚢をかまれて死にかけ、生涯犬が苦手だったらしい。 万が一そこで死んでた場合、薩長連合軍により江戸は火の海になり、陰嚢の味を覚えて男子を次々襲う魔犬・ふぐり噛みの伝説まで生まれて…

上野千鶴子『差異の政治学』

差異の政治学 新版 (岩波現代文庫)作者:上野 千鶴子岩波書店Amazon 「男性学」の巻に、わたしはゲイ・スタディズの項目を立てた。そこで伏見憲明の 原稿の収録を依頼したところ、ご本人からお断りの返事を頂戴した。その理由は、「自分としては男性学もしく…

佐野眞一『巨怪伝』

正力松太郎と影武者たちの一世紀 巨怪伝 上 (文春文庫)作者:佐野 眞一文藝春秋Amazon 正力松太郎と影武者たちの一世紀 巨怪伝 下 (文春文庫)作者:佐野 眞一文藝春秋Amazon あの当時、マッカーサー司令部はヘソと呼ばれていました。朕の上に君臨するという意…

栗本慎一郎『パンツをはいたサル』

【増補版】パンツをはいたサル: 人間は、どういう生物か作者:栗本 慎一郎現代書館Amazon 京都大学の森教授が、興味深い話をしておられたので紹介しておこう。 「あるときサル学者たちが集まって、類人猿と人間とでは雑種ができそうだ、チンパンジーで実験し…

『孫子・呉子』

孫子・呉子 (中公文庫)中央公論新社Amazon 孫子は「物資はできるだけ敵地で略奪したほうがいいよ」とか「火攻め水攻めサイコー!」とか言ってるので、「孫子の兵法をビジネスに活かす」と言ってる人を見ると「ヤバ……近寄らんとこ……」って思っちゃう。

呉智英『読書家の新技術』

読書家の新技術 (朝日文庫)作者:呉 智英朝日新聞社Amazon 資本主義の会社に勤めている人。何の恥ずかしいことがあろうか。がっちり儲けて、そして読書をしてほしい。マルクスの著作を読んで資本主義の矛盾を知り、現状変革への情熱を燃やしてほしい、搾取の…

渡辺京二『北一輝』

北一輝 (ちくま学芸文庫)作者:渡辺 京二筑摩書房Amazon 松本清張はいう。「この著書の内容に『社会主義』の科学的理論を読みとることはできない。その文章に一種の張り扇の音が聞えるように、衒学的で空想的な社会主義である。 とすれば、北の『転向』という…

『アリストテレース詩学/ホラーティウス詩論』

アリストテレース詩学/ホラーティウス詩論 (岩波文庫)作者:アリストテレース,ホラーティウス,F.Q.,松本 仁助岩波書店Amazon アリストテレスって聞くとプロレスを連想してたのは何だったのかと思ったが、アリストトリストだ。 悲劇は行為の再現であり、行…

エドマンド・バーク『フランス革命についての省察』

フランス革命についての省察 (光文社古典新訳文庫)作者:エドマンド・バーク光文社Amazon 我々はマンガやアニメやゲームを見すぎているから、山奥の村の老人が「その神木を傷つけては……いかぁん!」って叫んだら、ああ、これはマジでヤバいやつだなってちゃん…

『世界の名著16 アウグスティヌス』

世界の名著 16 アウグスティヌス (中公バックス)作者:アウグスティヌス中央公論新社Amazon ずっと気になってるんだけど、期せずしてうんこ漏らしちゃうのって罪なんだろうか。社会的には(例えば満員電車内とか)罪っぽいけど、神学的には罪なのか。意識をし…

吉田洋一・赤攝也『数学序説』

数学序説 Math&Science (ちくま学芸文庫)作者:吉田洋一,赤攝也筑摩書房Amazon デカルトを「コギトの人」って考えるとすごいのかすごくないのかよくわかんなくなってくるけど、「ギリシアの幾何学の系譜と、インドの代数学の系譜を、解析幾何学によって統合…

『現代語訳 古事記』

現代語訳 古事記 (河出文庫)河出書房新社Amazon 俺はずっと「じ」にアクセントがあると思ってたんだけど、他の人は割りと「こ」にアクセントを置いて呼んでる場合が多い。「き」にアクセントを置く人はさすがに見たことがない。

大隅和雄『日本の文化をよみなおす』

日本の文化をよみなおす―仏教・年中行事・文学の中世作者:大隅 和雄吉川弘文館Amazon 鎌倉以前の日本仏教って「鎮護国家」という言葉で天皇・国家とガッチリと組み合ってるイメージだったので、「そもそも天皇の万世一系の系譜と、仏教の六道輪廻の世界観っ…

佐藤誠三郎『笹川良一研究』

笹川良一研究―異次元からの使者作者:佐藤 誠三郎中央公論社Amazon 「一休さん」のプロデューサーであった東映動画の栗山富郎によれば、エンディングの歌詞を母親に宛てた手紙の形式にするのは、作詞家のアイディアではなく、栗山がとくに出した注文であった…

スピノザ『エティカ』

エティカ (中公クラシックス)作者:スピノザ中央公論新社Amazon 「海外文学って登場人物が誰が誰だかわかんなくなるから苦手」っていう人が結構いて、そんなもんかなと思ってたけど、最近それがすごくよくわかる。加齢と共に着実に知力が低下してる。テレビに…