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プルタルコス『饒舌について』

プルタルコスのエッセイは異常におもしろい上、古代の知識人らしく、話の登場人物もセレブばかりでとにかくすごい。現代の「芸能人が片手間で書いたユーモアエッセイ」みたいのを一息で粉砕するパワーがある。

シシリー島シュラクサイの僭主ヒエロンは、いやな口臭がすると敵から言われた。そこで帰宅して妻に言った、「これはどういうことだ。そなたもこんなことは一言も私に言わなかったではないか。」

その妻は賢く純情な女性だったが、「殿方というものは皆さまこういう臭いがいたすものと存じておりました」と答えた。かくのごとく、感じとか、誰の目にも明らかなことというものは、友人や近親者より敵から知らされるものなのだ。

統治者なんかになったばっかりに、後世の人間に「口臭がひどいことを妻にあたりちらした」と記憶されることになった男。

賢明なるアリストテレスも同意見である。彼もおしゃべり屋につきまとわれ、見当違いな話を聞かされてうんざりしていたのだが、その男が、「先生、これは驚くべきことじゃありませんか」と言うに及んで、「なに、そんなことはない。それより、ちゃんと足があるのに君から逃げ出さずにいる者でもいたら驚くがよい」と言ったそうだからである。 これと同類のまた別の男が、さんざんしゃべったあげくに、「先生、私の話にお疲れのようで」と言ったのに対してアリストテレスが、「いや、とんでもない。 聞いてはいなかったからね」と言ったという話もある(この二つの逸話の出典不明)。

あわてないアリストテレス

スッラは直ちに深夜に軍勢を起こして市内に乱入し、ほとんど完膚なきまでに市を破壊して殺戮をほしいままにしたので、市内は死屍累々、市場北方のケラメイコス区などは 血が川をなして流れた。スッラはアテナイ人に対してかほどまでに憤怒を燃やしていたのだが、 それはアテナイ人の振舞いではなく、むしろ自分について彼らが言った言葉が原因となっていた。 というのも、アテナイ人は城壁の上に跳び上って、スッラとその妻メテッラの悪口をはやしたてたのである。

「うどん粉まぶしの桑の実野郎」

意味はわからないがとにかく絶対に他人に向けて投げかけてはいけない言葉。